一体型高級スポーツウォッチの波が5年余り続き、その中で「新鋭のステンレスキング」として頭角を現したジラール・ペルゴ(Girard-Perregaux)。その象徴である「アカデミー(Laureato)」が、今年、待望の重量級ニューモデルを発表しました。それは、アカデミー50周年記念モデルです。この新モデルは、過去のアンティーク・アカデミーの要素を吸収し、新たなサイズを採用しただけでなく、何より重要なのは、ジラール・ペルゴ全新世代のムーブメント「GP4800」を搭載した点です。
本日は、ジラール・ペルゴ社のマネージングディレクター、Marc Michel-Amadry氏の最新の発言も交えながら、アカデミー50周年記念モデルと、全新世代GP4800自動巻きムーブメントを、全面的にディープディiveで解説します。
詳細スペック:ジラール・ペルゴ アカデミー50周年記念モデル
ケースサイズ: 39mm
ケース素材: ゴールド / ステンレススチール(コンビ)
参考価格: 218,000元(限定200本)
ジラール・ペルゴ アカデミーとは何か?唯一無二の「純粋自社設計」
皆様ご存知の通り、パテック・フィリップのノーチラス、オーデマ・ピゲのロイヤルオーク、IWCのインgenieur、そしてジラール・ペルゴのアカデミーは、いずれも1970年代という同時期に誕生した「一体型」高級スポーツウォッチ(ケースとブレスが一体化したデザイン)です。しかし、その中で唯一、ジラール・ペルゴだけが完全な自社設計と自社ムーブメントを誇ります。
ジラール・ペルゴのマネージングディレクター、Marc Michel-Amadry氏は、最近のインタビューで次のように強調しています。
「アカデミーのストーリーで私が愛している点は、著名な1970年代のラグジュアリースポーツウォッチ(ノーチラス、ロイヤルオーク、インgenieur)の多くとは異なり、ジェラルド・ジェンタが設計したものではなく、またジャガー・ルクルトのムーブメントを搭載しているわけでもないことです。すべてがジラール・ペルゴの自社工房で conceived(構想)され、produced(生産)されたものです。」
これこそが、ジラール・ペルゴ アカデミーに、より強固な「独自性」をもたらしている所以です。
50周年記念モデル:アンティークモデルへのオマージュ
今年の50周年記念モデルは、1975年のオリジナル・アカデミーアンティークの要素を随所に取り入れています。
なぜコンビモデルなのか?
1975年に発表された当時が、すでにゴールドとステンレスのコンビ仕様だったからです。
複雑な構造のベゼル
ジェラルド・ジェンタ設計のノーチラス、ロイヤルオーク、インgenieurなどとは一線を画し、アカデミーはより造形が複雑なベゼルを特徴とします。上層は八角形、下層は円形になっており、それが重なり合ってケースに収まっています(八角形ベゼルのピンとケースの穴が見えます)。
精緻な仕上げ
上層の八角形ベゼルは環状のシャンブル加工、八角形の面取り部分と下層の円形部分はポリッシュ仕上げが施され、多くの反射面を生み出しています。このベゼルが鋼のケースに載っていることで、精巧かつ贅沢な印象を与えます。
文字盤とサイズの進化
文字盤(グレー・ピュイット・パリ)
灰色の文字盤はアンティークモデルに由来しますが、全面に「ピュイット・パリ(Paris hobnail)」模様が施され、日付窓の下地も盤面と同色同質です。
新デザインのインデックスと針
50周年モデルは、これまでのものとは異なり、新しく立体的な時標と針を採用。より明確な面取りとシャンブル加工が施され、繊細で立体感が増しています。
12時位置のロゴ変更
過去のモデルにはあった12時位置の「GP」略称ロゴが撤去され、現在のブランド名「Girard-Perregaux」のフルネームのみが配置されるようになりました。
39mmという新サイズ
これまでのアカデミーの3針モデルは42mmや38mmが中心でしたが、50周年モデルでは39mmという新たなサイズが採用されました。厚さも従来の10.68mmから9.8mmへとさらにスリム化されています。
H字リンクブレス
ケースヘッドと一体化したH字型のブレスレット。金ベゼル、金王冠に加え、ブレスの中央リンクもゴールドです。実際に手首に載せてみると、42mmモデルよりも着け心地が非常に良く、また新たに追加されたクラスプの微調整機能も、非常に使い勝手が良いです。
メインイベント:全新世代主力ムーブメント「GP4800」
そして、今回の最大の見どころは、この50周年記念モデルが全新世代のジラール・ペルゴ GP4800自動巻きムーブメントを搭載している点です。これはこれまでに存在しなかった新型ムーブメントであり、今後のジラール・ペルゴの主力ムーブメントとなることが予想されます。
GP4800ムーブメントの詳細
サイズ: 25.6mm(直径) × 4.28mm(厚さ)
振動数: 時速28,800振動
動力: 55時間
技術的特徴
GP4000からの進化
公式には明言されていませんが、長年の愛用ムーブメント「GP3300」ではなく、「GP4000」(2004年ソーフィンググループ発表、サントスなどでも使用)をベースに大幅なリファインを施したモデルと見られています。
三金橋構造への回帰
GP4800は、横跨式(クロスバー)のバランススプリングバーを採用。これに走時輪系ブリッジ、ゼンマイブリッジを合わせた上中下3つのブリッジが、ジラール・ペルゴを象徴する「三金橋(Trois Cercles d’Or)」構造を彷彿とさせます。
大型砝碼(おもり)無卡度(ウインカット)遊丝
目を引く大きな無卡度(ウインカット)式の砝碼(おもり)付き遊丝を搭載。
シリコン部品
エスケープホイールとインパルスジュー(アンクル)にシリコンを採用(シリコン遊丝は現時点では未使用)。
新デザインの镂空(ロクソウ)自動巻きローター
新たにデザインされた镂空(ロクソウ)の自動巻きローターにより、ムーブメントの視覚効果が非常に優れています。
グループ戦略と今後
ソーフィンググループ(Sowind Group)は、ジラール・ペルゴとウブロ(Ulysse Nardin)の2ブランドで構成されています。Marc Michel-Amadry氏は、「両ブランドにはシナジー効果(相乗効果)があります。同じ屋根の下に非常に才能豊かな時計師やエンジニアがいますが、それぞれのブランドのDNAを正しく表現するため、独自のグランドコンプリケーション専用工房も存在します」と語っています。
同グループのウブロがシリコン技術をフルセットで保有していることを考えると、将来的にGP4800ムーブメントがシリコン遊丝へと進化する可能性は十分にありそうです。
これからのジラール・ペルゴの主力ムーブメント構成
新型GP4800ムーブメントは、老舗GP3300ムーブメントを代替し、新たな主力ムーブメントの座に就きます。これにより、以下の2本柱体制が確立します。
中型サイズ主力: GP4800(サイズ25.6mm)
大型サイズ主力: GP1800(サイズ30mm、2017年発表)
Marc Michel-Amadry氏は、「25.6mmサイズの新型GP4800ムーブメントであれば、仮に将来的に36mmサイズのアカデミーを製作したとしても、そのフィット感は完璧なまま維持されるだろう」と語っており、これはまさに新世代ジラール・ペルゴの幕開けを告げるものと言えるでしょう。
まとめ
18世紀末から、パテック・フィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタン、ジャガー・ルクルトなどと肩を並べて名を馳せた名門時計ブランド、ジラール・ペルゴ。今回、高級スポーツウォッチのトレンドの中で、アカデミーは再び同ブランドを最も「注目を浴びる」存在へと押し上げました。
